研究概要 |
鋳型成形(モールド)法によるピラミッド状ダイヤモンドの作製技術を考案し,この技術と尿素を用いたダイヤモンドへの高濃度窒素の添加方法を組み合わせることで得られるダイヤモンド冷陰極から,非常に低い電界における電子放出現象が確認された.これらの低電界における電子放出機構の解明のため,放出される電子のエネルギー分析を行った結果,E_F近傍の比較的高いエネルギーから放出されることが確認され,Appl. Surface Sci.に報告した.またダイヤモンドへのキャリア注入に着目し,注入電極依存性に関しAppl. Surface Sci.に報告し,このような窒素添加ダイヤモンドからの低電圧/電界での電子放出現象の解釈の一つとして,"space charge interlayer" modelを提案しJ. Vac. Sci. & Tech. Bに報告した.さらに,"Metal-insulator-vacuum type electron emission"という概念をダイヤモンドに初めて適用するごとで,窒素添加気相成長ダイヤモンドからの電子放出現象が矛盾なく説明できることをAppl. Phys. Lett.に報告し,さらにその検証実験の結果をPhisica Status Solidiに報告した.この他にも関連した実験結果として,ホウ素添加ダイヤモンドからの電子放出に関する論文なども数編掲載されており,近年のダイヤモンドからの電子放出に関するレビューとして電子情報通信学会誌に招待論文が掲載されている. このように,本研究は,当該研究助成期間中に,計15編の論文にまとまり,窒素添加気相成長ダイヤモンドからの電子放出機構をほぼ解明するまでに至っているが,実用化にはまだいくつかの問題が残されており,継続的にその問題の解決を目指していきたいと考えている.
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