軟X線蛍光顕微鏡は軟X線(放射光)を試料に照射し、それに含まれる原子から放出される軟X線蛍光をシュワルツシルト光学系で結像することによって、原子種の情報も含んだ試料局部の拡大像を得るものである。軟X線の透過距離は光電子の脱出深さより長いので、バルク内部の状態を観察できるという特長がある。シュワルツシルト光学系に軟X線用多層膜を蒸着することで、軟X線の直入射反射が可能となるだけでなく、多層膜の狭帯域反射で原子の化合状態も識別できるという特徴がある。本年度は初年度の研究計画である軟X線蛍光顕微鏡を設計・製作し、その性能評価を実施した。初めに装置の諸条件を勘案してシュワルツシルト光学系の拡大率を50倍とし、光線追跡法によって光学系の組み立てに必要な精度を見積もった。SiL発光を検出するためにシュワルツシルトミラーにはMo/Si多層膜を蒸着した。Siウェハー上に巾5μmのSiO_2とWの線が交互に繰り返すパターンを刻んだ標準試料に電子線を照射し、検出器に現われる像を解析した。その結果、SiO_2のパターンが初めて確認でき、試料上で5μmの分解能を有することが分かった。この成果は99年春の応用物理学会で発表する予定である。現在は更に分解能を向上させるために従来の試料ホルダー(3軸マニピュレータを利用)を、真空槽内に直接固定し、試料位置の微調整が可能な新しい試料ホルダーを設計している。この改造によって分解能1μmを達成する予定である。第2年度はこの軟X線蛍光顕微鏡が反応生成物の非破壊検査法として原理的に優れていることを実証する予定である。
|