研究概要 |
昨年度に,光路長が周囲温度によって変化しないアサーマル光導波路を用いた温度無依存狭帯域波長フィルタを実現し,さらに紫外線照射よるフィルタの中心波長トリミング技術も確立できた.そこで本年度は,波長フィルタの偏光無依存化とその偏光無依存条件のトリミング技術の開発を目指した. まず,報告者らが一昨年度に開発した積層型マイクロリング共振器フィルタの共振波長の偏光無依存化技術の開発を目指した.この波長フィルタは,従来のリング半径の大きなリング共振器では共振波長間隔(FSR)が1nm以下で波長多重通信用には適さなかった問題を,リング半径を数十μmまで超小型化することによって20nm程度にまで拡大し,さらに網目状配置による高密度集積化を可能にした狭帯域Add/Drop波長フィルタである.しかしながら,共振波長が偏光依存性を持ち,しかも極端に小さな曲率半径によって導波路断面を正方形にしても偏光依存性を除去できないため,クラッド層に大きな複屈折率(約0.1)を持つフッ素化ポリイミドを用いてリング共振器導波路の構造複屈折を打ち消す方法を提案した. さらに,ポリイミドが紫外線照射によって屈折率がほとんど変化しないにも係わらず,膜厚が数10%も薄くなる減少を新たに発見し,この減少と複屈折を組み合わせて,製作誤差によって偏光無依存化条件からずれた場合に,紫外線照射トリミングによる偏光無依存化も提案した.そして,この設計による変更無依存化マイクロリング共振器Add/Dropフィルタを製作し,共振波長が偏光に無依存であることを実証した.なお,製作時にすでに偏光無依存化が達成されており,紫外線照射によるトリミングは不要であった.
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