研究課題
平成12年度には、軽水炉水模擬環境下における電気化学ノイズ測定手法の改良・最適化を進めるとともに、解析手法の検討と割れ発生機構の推定を行った。1.試料極(試験片)、試験片と同一材料から製作された対極、そして照合電極からなる3電極法を採用して、加圧水型原子炉1次冷却水模擬環境中での応力腐食割れ試験における電気化学ノイズ測定を実施し、割れ発生に伴う電気化学ノイズの特徴付けを引き続き行うとともに、ノイズ波形の精密な解析に基づく割れ発生機構の検討を進めた。その結果、皮膜破壊により環境に露出された新生面上では、母地金属の活発なアノード反応が生じると同時にカソード反応(水素発生反応)が促進され、それらが重畳した過渡電流波形が現れることが判った。ただし、量的にはアノード反応が勝っていた。水素発生反応の促進は、皮膜破壊による電位の低下と新生面の触媒的作用によってもたらされたものと解釈された。2.電流および電位波形解析の結果、過渡的なアノード反応による余剰電子は電極界面の電気2重層容量に一旦蓄えられていることが判った。これはすなわち、加圧水型原子炉1次冷却水環境のような酸化剤濃度の極めて低い環境においても、過渡的であれば比較的大規模なアノード反応が実現されることを意味する。3.上述の波形解析の結果は、加圧水型原子炉1次冷却水模擬環境におけるニッケル基600合金の応力腐食割れに対して提案されている各種割れ機構のうち、すべり溶解機構および水素割れ機構を支持するものであった。4.実機構造の割れ発生監視への応用のための基礎技術として、マルチ電極方式の電気化学ノイズモニタリングによる割れ発生位置評定手法を考案し、モデル試験によって原理的成立性を実証した。
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