研究課題
基盤研究(B)
1.電気化学ノイズ計測のための軽水炉模擬環境下応力腐食割れ試験装置の改良を行った。オートクレーブ試験に特有のグラウンドループの影響を避け、加圧水型原子炉(PWR)1次水模擬環境中での計測において、系のごく僅かな圧力変動(1%程度)により割れによるものと類似の信号が発生することが判明したため、それを抑制するための工夫を施し、微弱な電気化学ノイズの高精度な計測を可能とする試験設備を実現した。2.試料極(試験片)、試験片と同一材料から製作された対極、そして照合電極からなる3電極法を採用して高温高圧水中での低ひずみ速度試験における自然腐食下での対極-試料極間の短絡電流振動(電流ノイズ)と腐食電位振動(電位ノイズ)の同時計測を実施し、割れ発生を感度良く検出できることを実証した。3.電流ノイズ波形の解析から、沸騰水型原子炉(BWR)冷却水模擬環境での鋭敏化ステンレス鋼の割れ機構がすべり溶解型であることが支持された。4.一方、PWR1次冷却水模擬環境におけるニッケル基600合金の応力腐食割れについては、皮膜破壊により環境に露出された新生面上で母地金属の活発なアノード反応が生じると同時にカソード反応(水素発生反応)が促進され、それらが重畳した過渡電流波形が現れることが判った。すなわち、すべり溶解機構および水素割れ機構を支持する結果となった。5.電流および電位波形解析の結果、過渡的なアノード反応による余剰電子は電極界面の電気2重層容量に一旦蓄えられていることが判った。これはすなわち、PWR1次冷却水環境のような酸化剤濃度の極めて低い環境においても、過渡的であれば比較的大規模なアノード反応が実現されることを意味する。6.実機構造の割れ発生監視への応用のための基礎技術として、マルチ電極方式の電気化学ノイズモニタリングによる割れ発生位置評定手法を考案し、モデル試験によって原理的成立性を確認した。
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