研究概要 |
現在,長さが10kmに及ぶ次世代の直線加速器の開発計画が進んでいる.この加速器本体は超精密加工及び拡散接合技術で作られる長さが約1.5mの加速管を連結して構築することになる.加速器本体の構築という観点からは,外見からは円筒に見える10kmの長さの粒子が走るトンネルの真直度が問題となる.このため、高い精度で長尺円筒の真直度を測定する技術が要求されている.本研究では,5mの長尺円筒の超精密測定システムを実現し,この次世代直線加速器構築のための真直度測定システムの設計におけるエラーバジェット用の基礎データを得ることを目的に研究を進めた.本年度では測定法の提案と走査範囲が5mの走査システムの設計と試作を行った.まず円筒の鉛直方向と水平方向の両断面内の真直度を同時に測定する新しい3点合成法を提案した.この方法は和と差の3点合成法で,長尺円筒で重要な誤差要因となるヨーイングの除去が可能である.なお,データ処理法には段差のある直線の測定に有効なデータ処理法である合成法を取り入れることによって,加速管の継ぎ目に対処できる.さらにコンピューターシミュレーションによって種々の誤差要因について検討し,プローブ間隔設定に関する指針を得た.また,現有の1mの走査ステージを使って,段差試料を測定し,実験結果から提案の手法の有効性を確認した.しかし,センサを載せるベースが片持ち梁状にステージに取り付けられているため,外部からの振動に共振して,特定のプローブに誤差が混入してしまう問題が生じた.そのような誤差は差動演算でも取り除くことができないので,除振対策を考えたうえで5mの走査システムを設計し,試作した.この走査システムで,長さ1.5mの加速管を3本連結して構築する長尺円筒の直線母線形状を測定する準備ができた.
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