研究概要 |
本研究は,光造形法で製作するマイクロ部品を方向を揃えたウィスカーで強化することを目的としている.液体の樹脂とウィスカーの混合物に電界を印加し,電界方向にウィスカーの長手軸方向をそろえた後,樹脂を所望の形状に硬化させることによって,ウィスカー方位のそろったマイクロ部品を製作した. 光造形法でマイクロ部品を精度良く製作するためには,硬化させる部分には,十分なエネルギーの光が照射され,硬化させたくない部分には,光が照射されないことが必要である.このために,樹脂中の照射エネルギーの分布という観点から造形精度を検討した.光造形法でマイクロ部品を製作するためのおもな手法として,マスクパターン転写法と集束ビーム描画法があげられる.この両手法について,造形時の照射エネルギー分布を光の回折,樹脂中での光の吸収,硬化時の樹脂の収縮を考慮して計算した.そして,得られる造形物の形状を実験で確かめた.その結果,集束ビーム描画法のほうが,硬化させる部分と硬化させない部分の照射エネルギーの差が大きくなり,精度の良い硬化形状を得られることがわかった.造形精度が悪化したマスクパターン転写法においても,樹脂中でウィスカーの方向を揃えて硬化させることにより,造形精度を向上させることができた.次に,機械的な強度について調べるため,ウィスカーの方向を揃えて強化したマイクロ造形物の引張試験を行った.その結果,ウィスカーを揃えた方向についての引張強度が最も向上し,機械的な強度の面からも,ウィスカーの方向を揃えることの有効性を確かめることができた.
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