1. 現有の予混合燃焼器を搭載した超小型水素ガスタービンの運転試験の実施 現有の予混合燃焼器を搭載した超小型水素ガスタービンは始動時に頻繁に逆火を起こした。この原因としては、火炎が付着する逆流領域の最上流部が、燃焼器入口外にまで発達するためと推定された。そこで逆流領域を燃焼器内に限定するためのひさしを付けた改良型保炎器を製作し、この保炎器を備え燃焼筒が透明石英でできた試験燃焼器と、これと燃焼器内流路形状が同じである実機燃焼器とを用いて、燃焼器単体の安定限界や燃焼器内の火炎形状観察・試験燃焼器内温度分布測定・燃焼器保炎器壁面の静圧分布測定・ひさしの有無による始動時の保炎器周りの圧力変化測定等を行った。これらより逆火は当初の予想通りの原因で起こることを確認した後、改良型予混合燃焼器を搭載した超小型水素ガスタービンの運転試験を実施し、逆火を起こすことなく始動することを確認した。 2. 高性能予混合試験燃焼器の試作 1.で報告したように水素は、希薄混合気であっても完全に予混合させた場合には、逆火の危険性が常に生ずる。そこで拡散火炎の優れた火炎安定性と予混合気の低NOx特性を利用する方法として、旋回空気流中に過濃混合気の噴流火炎を形成させる燃焼方式を考えた。このアイデアに基づき、試験燃焼器を設計・試作した。この試験燃焼器の諸特性の測定は来年度に実施する。 3. Mg系水素吸蔵合金の選定と予備実験の実施 水素ガスタービンの排気ガスを熱源として利用して水素ガスを吸放出するMg系水素吸蔵合金として、作動温度が300℃程度の高温用で単位質量あたりの水素吸蔵量の多いMg2Ni-ZrMn1.5Co0.5・CaMg1.8Ni0.5の3種類を選んだ。これらの合金の水素吸蔵・放出速度及び熱伝導率等の測定を行うために、水素ガスタービンの排気を模擬し500℃程度まで加熱可能なプロパン・空気燃焼加熱装置を試作した。これを用いてこれらの合金の水素吸放出に関する基礎データの収集を開始した。
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