研究概要 |
医学・生物学・生命工学の研究において,細胞内部の個々の小器官が生きた細胞の中でどのように機能しているのかを明らかにするために,細胞内部への物理的なマニピュレーションが必要とされている.しかし,従来のマニビュレータは剛性が低く,操作力や位置決め精度が不十分であった上に,操作には個々の研究者の高度の熟練が必要で,学問の進歩を妨げていた.本研究は,高倍率光学顕微鏡の直視下で細胞内小器官などの数μmオーダの微小生体物の自在な操作を可能とするプレパラートマュピュレーションシステムの構築,および,その操作性を確保する作業状況蓄積・再現ソフトウェアを実現することを目的として進めている. 本年度は,プレパラートマニピュレーションシステムのハードウェアを構築した.細胞の中の対象小器官を観察するために,分解能の高い局所映像と広い範囲の大局映像を同時に得ることができる双倍率光学顕微鏡を新たに開発し,それにやはり新たに開発した2枚のプレパラートを相対駆動させるマニピュレータを取り付けた.また,エンドエフェクタをガラスの熱加工や研削加工によって製作する手法を確立した. これと並行して,本年度は,作業状況蓄積・再現ソフトウェアの基本部分を製作した.まず,作業命令や作業の実行状況の映像を計算機の大容量記憶デバイス上にMPEG4のフォーマットで意味を持った単位で階層的にデータ圧縮を加えながら蓄積する機能を実現した.さらに,蓄積された作業状況の内の指定された状況を再現する機能を実現した,実際に既に開発されていた汎用微細作業システムにこのソフトウェアを用いてみたところ,蓄積・再現機能のお陰で大量の作業も効率的に実行できることがわかった.
|