研究概要 |
真空ギャップが良好な絶縁特性を得るためには,真空中電極表面清浄化処理が必要であり,それによりコンディショニング後には,絶縁破壊電界が約250MV/m(ギャップ長0.3mmにおいて)に到達することが明らかにされている.この方法は,効果は高いが,処理を真空容器内で行うため,手間がかかる,電極形状に制限がある等の欠点がある.そのため,大気中で処理が行え,同等の絶縁特性が得られる処理法の開発が望まれている.本研究は,固体表面に存在する汚染物の一種である炭化水素を効果的に除去でき,かつ,その表面には炭素系の汚染物が再吸着しにくいといわれているオゾン水処理に着目し,絶縁耐力向上をもたらす大気中処理法としての実用化の可能性を探ることを目的としている. 研究初年度である今年度は,まず,高純度無酸素銅を素材とする供試電極を用意した.続いて,洗浄時間をパラメータとしてオゾン水によりその電極を洗浄し,真空中絶縁破壊特性を測定すると共に,絶縁破壊前後の電極表面状態の分析を行った.絶縁破壊試験の結果,コンディショニング後の絶縁破壊電界は約250mV/mに達し,真空中で表面清浄化処理を施さなくても,オゾン水処理により同等の絶縁破壊電界が得られることが明らかにされた.また,表面分析の結果から,当初期待された炭素系の汚染物の除去が十分でないことも判明した. これらの成果及び結果は,平成11年3月に山口大学で開催される電気学会全国大会で発表する予定である.また,平成11年8月に英国で開催される予定の第11回高電圧工学に関する国際シンポジウム(Int.Symp.on High Voltage Engineering)に論文を投稿しており,その審査結果を待っているところである.今後洗浄の条件を細かく設定し,最適な洗浄条件を見出すと共に,絶縁破壊に影響を及ぼす電子放出特性を詳細に調べることにより,コンディショニング効果が得られる原因を明らかにする予定である.
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