研究概要 |
本研究は3年計画であり,昨年度の成果を踏まえ,今年度は,実用的な面に重点を置き,オゾン水処理後大気中に長期間放置した場合,オゾン水処理パラメータを変化させた時,およびオゾン水処理後真空中前処理を行った場合での効果について調べると共に,メカニズムの検討のために電子エネルギー分析器による電界電子放出電子のエネルギー分析を行うことを考えた. まず,オゾン水処理後大気中に3カ月放置した電極のコンディショニング効果は,処理後約1週間経過した電極と同程度であることが確認された.これにより,オゾン水処理された表面は,長期間大気に放置しても,処理後の表面状態が維持されており,オゾン水処理が実用的に大きな利点を有していることが確認された.次いで,昨年度のオゾン水処理条件では,当初期待されていた表面再汚染の抑制が十分ではなかったので,今年度は,オゾン水の濃度を2.8ppmから4.8ppmに増加させて処理を行ったところ,表面の再汚染はかなり抑制できることが明かとなった.この場合も,コンディショニング後の絶縁破壊電界は250MV/m程度に達し,十分な効果が得られていることが認められた.さらに,オゾン水処理後の電極表面を,イオンビームにより酸化皮膜を破壊しない程度にスパッタし,表面の再汚染層を除去した電極の絶縁破壊特性を調べたところ,最初の電圧印加時の破壊電界が従来になく高い74MV/mに達し,コンディショニング処理なしに高い絶縁破壊電界強度が得られる手がかりが得られた.また,コンディショニング後の破壊電界も269MV/mとなり,極めて高い破壊電界強度が得られた. これらの成果および結果は,2000年9月に中国 西安で開催される19th Int.Symp.on Discharges and Electrical Insulation in Vacuumにおいて発表されることになっている.来年度は,電子放出特性等を詳細に調べて絶縁破壊のメカニズムを検討し,実用化に向けた処理条件を見出したいと考えている.
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