研究概要 |
環境保全の面から,火力発電所の排ガスなどをコロナ放電を用いた非平衡プラズマにより分解することが研究されており,高エネルギー(数100keV)のパルス電子ビーム照射による分解では,分解効率が格段に向上することが実験により確認されている。また,連続運転の熱陰極電子銃による数mAの電子ビームを用いたガス分解装置の研究も行われており,プラズマ分解法に比べて高い分解効率を得ている。 これに対し,本研究は,原理的には任意幅の帯状電子ビームを生成できる,ワイヤ・イオン・プラズマ源を用いた横出し型二次電子銃を開発し,大量のガス処理に応用しようとするもので,本方式は,高繰り返し運転が可能で,ビーム電流も高く,上述の2方式の中間形態を持っている。 ワイヤ・イオン・プラズマ源については,ほぼ開発が終了し,高電圧電源および電子銃部の下記の改良により,100kVの電子ビームを安定に生成できるようになった。気体処理室の電子ビーム入射窓の幅が25mm程度であるため,二次電子銃から気体処理室へ電子ビームを効率良く入射するために,電子ビーム軌道をシミュレーションにより求め,その結果から電子銃用陰極をイオン源に対して62度になるように設置した。また,差動排気用ポンプの能力とのかね合いから,ワイヤ・イオン・プラズマ源から引き出されるイオンビームの形状が幅300mm,厚さ2mmの帯状となるよう,イオン引き出し窓の形状を変更した。生成された電子ビームの分布,電子窓に用いる厚さ20μmのアルミニウム薄膜およびハニカム構造体のビーム透過率等を測定し,ビーム電流密度分布が一様であることを確認した。得られた,電子ビームの電流密度は,排ガス処理への応用についての仕様を満足するものであることを確認した。今後,気体処理室に大気圧の窒素酸化物ガスを導入し,電子ビームによる気体処理実験を行う予定である。
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