研究概要 |
最近光エレクトロニクスの分野において,ナノ構造光デバイスの研究が活発化している。これは物理的観点からの人工原子ともいうべき量子ドットへの学術的探求と,これを活性領域とした極低消費電力レーザ素子の実現,さらに光場そのものも量子化したサブミクロン光素子とこれらの集積化による高速・並列光処理や光電子集積化による光配線を用いた高速化などへの期待が大きくなってきているためと考えられる。当該研究では,このような微細な光素子を作製する主な方法として,ナノメートルの解像度を持つ原子間力(AFM)ナノリソグラフィとmmの走査領域をカバーする電子ビームリソグラフィを絹み合わせた結合リソグラフィを提案している。両者はともに計測機能とパターニング機能を合わせ持つことから,パターン位置合わせの点からも将来性が高い。 今年度は,電子ビームによってパターニングされたカーボン膜の,AFMによる陽極酸化によるパターニングを中心に研究を進めた。その結果,プロセス時の湿度制御の重要性,並びに解像度,再現性をよくする上で60%程度が最適であること,AFM探針の先鋭さが解像度の向上に重要であること,AFMに導電性を持たせる膜としてCr膜,W膜,Au膜,Pd膜,カーボン膜等も検討したが,最終的にその安定性からTiN膜が最適であるとの結論に達した。このようにして作製したカーボン膜による選択成長マスクにより,微小領域でのZnSの選択成長過程を検討した。その結果,マスクのサイズが〜100nm以下になってくると,成長初期の核生成が起こりにくいことが判明した。またこれは半導体材料に関わらず一般的に起こる現象であることを,より一般的な理論考察から導いた。この問題に対して,成長初期の表面原子の化学結合を制御することにより,解決できること,また〜50nmの微小領域での選択成長が可能であることを示した。
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