研究概要 |
最近光エレクトロニクスの分野において,ナノ構造光デバイスの研究が活発化している。これは物理的観点からの人工原子ともいうべき量子ドットへの学術的探求と,これを活性領域とした極低消費電力レーザ素子の実現,さらに光場そのものも量子化したサブミクロン光素子とこれらの集積化による高速・並列光処理や光電子集積化による光配線を用いた高速化などへの期待が大きくなってきているためと考えられる。当該研究では,このような微細な光素子を作製する主な方法として,ナノメートルの解像度を持つ原子間力(AFM)ナノリソグラフィとmmの走査領域をカバーする電子ビームリソグラフィを組み合わせた結合リソグラフィを提案している。両者はともに計測機能とパターニング機能を合わせ持つことから,パターン位置合わせの点からも将来性が高い。 今年度は,電子ビームによってパターニングされたカーボン膜の,AFMによる陽極酸化によるパターニング,特にその解像度の改善を中心に研究を進めた。その結果,陽極化成中に膜内に蓄積するイオンによって内部バイアス電界が変化し,このためパターニング中央部の陽極化成の効率が低下することがわかった。これを補おうためバイアスを増すとパターンの解像度が低下すると理解された。これを防ぐ一つの方法として,サンプルに正バイアスをかけてOH^-イオンによる陽極化成を短時間行い,直後に逆の負バイアスでこの膜中に蓄積したイオンを引き抜けば,パターン解像度が改善することがわかった。さらに陽極化成のしきい値電圧の化成膜厚の増加による変化をシミュレーションによって見積もり,これに基づいて変調電圧陽極化成法を提案した。これによって解像度はさらに一層改善し,〜25nmの微細なパターニングが可能であることを示した。今後このパターンを用いて,量子構造の選択成長の可能性を明らかにしていく。
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