研究概要 |
最近光エレクトロニクスの分野において,ナノ構造光デバイスの研究が活発化している。これは物理的観点からの人工原子ともいうべき量子ドットへの学術的探求と,これを活性領域とした極低消費電力レーザ素子の実現,さらに光場そのものも量子化したサブミクロン光素子とこれらの集積化による高速・並列光処理や光電子集積化による光配線を用いた高速化などへの期待が大きくなってきているためと考えられる。当該研究では,このような微細な光素子を作製する主な方法として,ナノメートルの解像度を持つ原子間力(AFM)ナノリソグラフィとmmの走査領域をカバーする電子ビームリソグラフィを組み合わせた結合リソグラフィを提案している。両者はともに計測機能とパターニング機能を合わせ持つことから,パターン位置合わせの点からも将来性が高い。 今年度は,昨年度までに開発した,電子ビームによってパターニングされたカーボン膜をAFMによる陽極酸化によってパターニングする際の解像度の改善成果を用いて,量子ナノ構造を作製する技術へと発展させた。具体的には〜25nmの微細な開口パターンを周期的に作製し,CdS/ZnMgCdS系量子ドットの選択成長に成功した。通常の自己組織化量子ドットでは,ドットの大きさならびにその位置は十分には制御でいないが,この方法では作製した量子ドットの大きさはAFMリソグラフィで作製したマスクサイズで決めることができ,また設計した形状に配列することができる。作製例では直径約26nmのドット2次元配列を密度1x10^<10>cm^<-2>の密度で作製できた。これは人工配列したドットとしては世界最高水準の高密度を達成している。これはAFM・電子ビーム結合リソグラフィ技術の応用の一例にすぎないが,今後更にナノテクノロジーの推進に寄与すると期待される。
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