研究概要 |
超微細MOS素子の実現に必要な絶縁膜プロセスを完成させるため、シンクロトロ放射光を用いた超高分解能分光法と電気測定手段とを統合的に使用することにより各種絶縁膜(酸化膜、酸化窒化膜、窒化膜)の界面特性と信頼性の解析を行うことを目的とする。 まず、高エネルギー加速器研究機構放射光研究施設に新しい高分解能ビームラインBL-1Cを設計建設し、分解能16000を達成し、角度分解光電子分光システムを設置してSi表面からの光電子分光測定を70meV分解能で2分以下の短時間で測定可能にした。このシステムを用いてSi表面初期酸化過程を調べ、熱酸化膜ではSiO2/Si界面に3原予層のsuboxideからなる界面遷移層が形成されていることを見出した。また、室温酸化膜では界面1層目にSi+,Si2+が存在し、Si3+,Si4+はその上に2次元島状に広がることを見出した。また、低温酸化ではprecursor状態で吸着した酸素分子が温度上昇とともにSi原子のbackbondに侵入して酸化が進行することを見出した。さらに、NOガスで急速熱窒化させた2nm厚さの酸窒化膜の解析を光電子分光による行い、界面窒素原子の化学結合状態を解明した。 次に、X線照射時間依存性を利用した非接触酸化膜トラップ濃度定量法を考案し、化学酸化膜、熱酸化膜、酸窒化膜に対して適用したところ、化学酸化膜では10^9〜10^10cm^-2の正孔トラップが存在し、その密度は酸化膜中水素濃度と比例関係にあることを見出した。これは、Si-H結合が正孔ドラップの原因であるという理論計算結果を裏付ける結果である。また、リーク電流が少ない酸窒化膜では正孔トラップも少ないという結果になった。 さらに、これら欠陥の起因を解明するため、キャパシタンスXAFS法、および放射光DLTS法を新しく開発し、代表的窒化膜であるGaN膜の欠陥を解析した。すなわち、GaN膜にショットキー電極を堆積し、GaK吸収端の放射光をパルス状に照射してその過渡応答を測定する方法で、基板温度を変化させて緩和応答時間を調べて(深い)欠陥準位のエネルギーを求めたところ、0.9eVとなり、ルミネッセンスの値と良い一致を見た。この欠陥はGa vacancyであると思わ、この手法がゲート絶縁膜に適用出来る見通しを得た。
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