半導体ウェーハ表面のクリーンテクノロジーにおける最大の問題は有機汚染であると言われている。有機汚染したウェーハ表面に酸化膜を形成した場合、酸化膜の絶縁性の劣化をもたらすからである。この問題を解決するためには、この有機汚染を高感度でかつ高速に検出して、表面清浄化プロセスにフィードバックする必要がある。そこで本研究は、超高速・高感度Siウェーハ表面有機汚染インライン診断装置を開発することを目的とした。測定法としては多重内部反射型の赤外反射分光を用いた。最終的な開発目標は、12インチまでの大口径シリコンウェーハまで対応でき、ウェーハ表面上の汚染箇所を同定できるような高性能赤外診断装置の試作である。 本年度は以下の研究成果が得られた。 (1)基礎性能評価用診断装置の設計・製作。 試作した装置は (1)赤外集光系(2)赤外分光光度計(3)試料(ウェーハ)ステージより成る。(1)は赤外線がシリコンウェーハ端面に正確にあたるようにウェーハ位置を微調整するステージと集光系である。赤外光の集光には、凹面鏡を用いた。(2)の赤外分光光度計は本研究専用に新規購入した。(3)はシリコンウェーハを前後左右に移動できる装置で、市販の試料ステージをコンピュータで制御できるように整備した。 (2) Siウェーハ端面加工技術を開発した。 8インチまで加工可能で、任意の角度で研磨できる治具を試作した。 (3)汚染量の検出限界、適合ウエーハサイズの評価を行う。 実際にアルコールなどの有機溶剤で人為的にウェーハ表面を汚染させ、検出限界を定量的に見積もった。表面Si原子10000個に対して炭素原子1個程度の感度があることが分かった。12インチウェーハを端面加工することなく赤外線が内部透過することを確認した。これは実用化に向けての今後の研究に有用な知見である。
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