研究概要 |
本研究は、層状酸化物高温超伝導体Bi_2Sr_2CaCu_2O_y単結晶における、CuO_2超伝導層がBiO/SrO絶縁層と原子層スケールで交互に積層し、ジョセフソン結合していることによる固有ジョセフソン接合超格子を用いた(チューナブル)発振素子を試作し、その電子(正孔)波および量子波励起モードに対する外部からの制御方法を詳細に検討することで、最終的に小型冷凍機に搭載して、高温で安定に動作しうるGHz〜THz帯チューナブル発振素子を開発し、その発振特性を明確にすると共に、制御法を確立することが目的である。 本年度の研究成果は次のとおりである。 1. 自己フラックス法によりBi_2Sr_2CaCu_2O_y単結晶を成長し、その中から良質の単結晶を選定し、微細加工により、臨界電流の良く揃った固有ジョセフソン接合超格子メサを再現性良く作製できた。 2. 同超格子メサにおいて、外部磁界の印加により磁束量子(ジョセフソン・ボルテックス)を導入し、バイアス電流によりそのコヒーレント動作を誘起して、これに起因する磁束流ステップおよび共振(フィスケ)ステップを電流-電圧特性上で観測することに成功した。 3. さらに、同超格子メサにおいて、磁界の印加方法により、磁束量子(波)の伝搬状態を変化させることができ、観察された共振(フィスケ)ステップから、10GHz〜数THzの発振が可能であると判断された。 4. シミュレーションによっても、同様な結果が得られた。 5. また、高温で安定に動作する発振素子を開発するためには、熱的ノイズに強い高臨界電流特性を持つ固有ジョセフソン接合超格子の利用が望ましい。この目的には、Pb置換による(Bi,Pb)_2Sr_2CaCu_2O_y単結晶の固有ジョセフソン接合超格子の利用が有利であることを示した。
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