本研究は、層状酸化物高温超電導体Bi_2Sr_2CaCu_2O_y単結晶における、CuO_2超伝導層がBiO/SrO絶縁層と原子層スケールで交互に自然積層し、ジョセフソン結合することによる固有ジョセフソン接合超格子を用いた(チューナブル)発振素子を試作し、その電子(正孔)波および量子波励起モードに対する外部からの制御方法を詳細に検討することで、最終的に高温で安定に動作しうるGHz〜THz帯チューナブル発振素子を開発し、その発振特性を明確にすると共に、制御法を確立することが目的である。本研究で得られた成果は次のようである。 1.室温(300K)より4.2Kまで冷却可能な小型冷凍機を用いた発振素子駆動・測定系を構成した。 2.上記の単結晶(超伝導転移温度:〜85K)より発振素子として矩形メサを試作した。 3.矩形メサの動作時において、その固有ジョセフソン接合超格子における磁束量子(ジョセフソン・ボルテックス)のコヒーレント運動を観測した。その結果、4.2Kでは、磁束量子(波)は同接合内に生ずる電磁波の最高位相速度にほぼ対応する(1-5)×10^6m/sの高速度で運動することを見出した。一方、77Kにおいても同様な安定動作を確認できた。しかし、磁束量子(波)の高速度運動は接合数が20以下の場合に限られ、20以上の場合には抑制された。 4.同超格子は磁束量子(波)の高速度運動により高周波を発生し、その周波数は印加磁界によりほぼ比例的に増加する制御ができ、0.16Tの印加磁界によって80GHzの高周波が発生することを確認した。 5.同超格子に電流パルスを直接印加し、その振幅を制御することによっても、電子(正孔)波のコヒーレント動作を励起でき、これによる数十GHz-THz超高周波発振の可能性を見出した。
|