近年、LSI中のトランジスタの微細化に伴い配線も微細化され、配線の寄生抵抗・寄生容量による配線遅延の増大が問題となってきている。スケーリングによってゲート遅延は減少する一方、配線遅延が増加するため回路全体の高速化が難しくなり、配線遅延増加のための対策が必要となる。 リピータ挿入とは、配線長とともに2乗で増加する配線遅延を緩和する方法である。長い配線を間にリピータを挿入することにより分割し、配線遅延の増加を線形程度の増加に抑えることが目的である。リピータ挿入によって最適化される遅延時間は、トランジスタ・配線のパラメータで決まり、ゲート遅延が減少されればリピータ挿入の効果は増大する。単一配線であれば等間隔に最適サイズのリピータを挿入するのであるが、実際の配線に適用する場合、分岐部分や入出力端の境界条件の変化に対処できるリピータ挿入法を考えなくてはならない。 本研究では、はじめにリピータ挿入のための遅延時間計算モデルを考え、次に遅延時間最適化のためのリピータ挿入の方法についての研究を行った。リピータ挿入の方法として、等間隔リピータ挿入法、simulated diffusionによる方法、新たに提案する方法の3つの方法について、評価を行い結果をSPICEで検証した。Simulated diffusionによる方法は、最良の結果がえられる一方計算時間が膨大となる。新しく提案する方法では計算時間が少なく、遅延時間の増加はsimulated diffusionに比べ今回計算した例では平均1.6%に抑えられた。 また、リピータの挿入と共に増加する消費電力も考慮し、低消費電力設計に向けたリピータ挿入の問題について、単一配線の場合での研究を行った。例として消費電力・遅延時間積(PD積)最適化設計のためのリピータ数、リピータサイズの最適値を示し、消費電力と遅延時間の関係についての考察を行った。
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