動画像の符号化用VLSIは、回路規模が極めて膨大で、その消費電力は、極めて大きい。消費電力を大きくしている主要因は、動きベクトル検出にあり、その計算量は100GOPSを超え、画像符号化処理の95%を占めるとも言われている。本研究では、従来技術から大きく発想を変え、イメージセンサと動画像符号化処理を融合させた新しいアーキテクチャに基づく動きベクトル検出方式を提案した。本方式では、イメージセンサに高速補間撮像を撮像する機能を持たせ、反復ブロックブロックマッチングと呼ぶ新しい動きベクトル検出アルゴリズムを考案したことで、その計算量を、従来の約1/30と極めて少なくでき、動画像圧縮の消費電力を、大幅に低減できる可能性を有している。提案手法の鍵を握るデバイスは、通常ビデオ速度での高画質画像と、CMOSイメージセンサの非破壊読み出し動作に基づき、その画像間を高速に補間撮像するイメージセンサである。共同研究者である半導体メーカの協力を得て、このような272×260画素を有する機能集積CMOSイメージセンサを0.35mm CMOS技術により、実際に設計し、試作に投入した。来年度早々に、試作デバイスを入手できる予定である。設計の結果、本CMOSイメージセンサは、通常の16倍である、毎秒480枚の画像を取得するにも関わらず、消費電力が約16mWと非常に低消費電力であることが明らかとなった。上記設計と平行して、試作イメージセンサを用いて、提案手法である反復ブロックマッチング法に基づく動きベクトル検出処理の実験システムの設計を行った。実験システムは、光学系を介してセンサに画像を投影し、A/D変換後、高速画像グラバボードを介して、コンピュータ上に動画像を取り込むシステムである。次年度早々に、システムを完成し、動きベクトル検出の実験を実施する予定である。
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