研究課題/領域番号 |
10555121
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
押鐘 寧 大阪大学, 大学院・工学研究科, 助手 (40263206)
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研究分担者 |
井上 晴行 大阪大学, 大学院・工学研究科, 助手 (30304009)
遠藤 勝義 大阪大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (90152008)
片岡 俊彦 大阪大学, 大学院・工学研究科, 教授 (50029328)
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キーワード | 光の近接場 / 走査型近接場光学顕微鏡 / SNOM / 微小共振球 / ポリスチレン微小球 / 進行波共振 / MDRs / 時間領域差分法 |
研究概要 |
本年度は、研究計画の初年度に際し、近接場相互作用実験装置の設計・製作を行なった。 この装置は、実験試料の空間的な微動のためのXYZステージの各駆動軸に、ピエゾ素子からなるインチワームを採用した。このため、XYZ各軸について光波長よりも十分短い空間分解能5nmでの試料の移動が±5mmにわたって可能となっている。実験装置内は、ロータリーポンプ(既存)により0.1Paという高真空度を達成することができ、微小共振球表面に対する空気中の様々な分子による吸着の影響、種々の音源より発せられ試料の位置決めに影響を与える音波による振動を除去することができる。さらに装置全体を防振台(既存)上に設置し、音波以外の機械的振動からも十分隔離している。 相互作用実験に用いる狭帯域化半導体レーザー(既存)あるいはTi:サファイアレーザー(既存)の出力光は、チャンバー壁に設けた石英ガラス窓から入射し、チャンバー内でピグテイル型光ファイバに導入する。実験により発生するであろう光ファイバ内の光強度変化は、装置内でフォトディテクタを用いて光電変換し、電気信号としてチャンバー外へ取り出すことができる。 この装置では、垂直方向と水平方向に、それぞれ倍率100倍、35倍の試料観測用顕微鏡を取り付けてあり、高感度冷却CCDカメラ(既存)を取り付けての観測も可能である。このため、共振球(〜φ50μm)像を十分な大きさと空間分解能により観察可能である。既述のXYZステージのコントロールは、専用コントローラまたはパソコンにより可能となっており、今後、実験の進行に会わせて、制御系およびデータ取り込みシステムを改良して行く。 実験装置の性能チェックの後、基礎実験として微小球の光共振実験を開始した。光ファイバカプラハーフの上に設置したポリスチレン球(直径50m)に対し、光ファイバ内の光波を光の近接場により結合させた。この光波の周波数を数十nmにわたりスキャンしたところ、顕微鏡で観察される球像の縁に見えている輝点の強度が、周期的に明滅した。この周期は、光波長でほぼ2.7nm間隔で現われ、球の内表面に沿った進行波共振が基本モードに従って発生することが分かった。この実験結果に対応させるため、球内の光波伝搬状態について2次元の時間領域差分法(FDTD法)を用いて解析を行なった。ただし、計算精度と計算機メモリの制限から、直径5μmの微小球(正確には円柱)について計算した。その結果、実験結果に対応するような光共振状態が確認できた。この計算ではさらに、レーザー光入射角およびレーザー光の偏光状態をパラメータとしたシミュレーションも行ない、共振球プローブ内の光共振状態をレーザー光の照射条件で制御できる可能性を見いだした。
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