本研究の目的は60GHz帯ミリ波を利用し、堅牢、小型、安価で高性能な集積化ミリ波高速無線LAN装置を開発することにあり、装置の高性能化を確保するため、我々がこれまで提案、開発してきたNRDガイド(非放射性誘電体線路)を基にしたミリ波集積回路を用いる。また、その際の通信形態としては、一つの情報端末に対し複数の加入者系を想定した多元接続方式を採用するが、このような多元接続方式ミリ波高速無線LANシステムでは、情報端末側と加入者側に用いるミリ波トランシーバが重要となる。 そこで、このような多数の加入者トランシーバに対してデータを送受信するための、周波数分割多重化アップ/ダウンコンバート方式NRDガイドトランシーバを開発した。その構成回路素子としては、周波数安定化ガン発振器、アップ/タ゜ウンコンバータ、サーキュレータ、方向性結合器、及び無反射終端からなり、これらは平面寸法7cm×8cmの小形ハウジングにコンパクトに格納されている。このトランシーバの特筆すべき点は、多くの加入者を想定した特性の広帯域化にあり、フィールド試験ではアナログやデジタル形式を含む、数百チャンネルに及ぶ動画TV信号無線伝送を成功裏に行うことができた。 続いて本システムに適したミリ波アンテナの開発を行った。試作したアンテナは簡便な構造ではあるが、簡単な調節により、鋭角ビームから広角ビームまで自由にその放射指向性をコントロールすることが出来、情報端末装置と加入者トランシーバの双方に装着することが出来た。 以上本研究においては、周波数領域において信号を多重化し、ミリ波で多元接続を行うという先駆的なシステムの開発に成功した。今後の展望としては、時分割、さらには符号分割を用いた多元接続方式の開発があげられる。
|