研究概要 |
本研究は,本校総合技術教育研究センターに平成6年に設置された大型無響水槽を用いて,回折トモグラフィによる物体の非破壊内部探査アルゴリズムの実験的検証ができる開発支援システムの実用化を目的として研究を行った。補助金交付期間内に行った研究の概要を以下に示す. 1.大型無響水槽中の水中音響計測システムの整備を行い,水槽中の音場分布,吸音材の効果の検証を行った.その結果,吸音材が水面及び壁面に取り付けられている領域では十分無響状態であることが確認された。しかし,被計測物体への入射波を平面波とするには,吸音材が取り付けられていない遠方領域から音波を放射する必要があり,水槽の全領域を用いた研究には,吸音材が全面に必要であることがわかった.そこで,高価な吸音材を低価格で作製するための基礎研究として,吸音材等の人工媒質の波動に対する媒質定数に関する研究を並行して行い,その設計に有用な結果を得た. 2.再構成アルゴリズムの調査を行うため,基本的な再構成アルゴリズムであるボルン近似法の解像度について計算機シミュレーションにより確認を行った.また,計測結果の視覚化のための研究として,カラー画像を対象にした領域分割法の調査を行い,有用な結果を得ることができた. 以上のように,無響水槽の吸音材装加に関する問題を除き,目標は,ほぼ達成された.また,地元企業からの要望により,本研究の実用化の一つとして,動作時に音を出す工業製品の非破壊探査法(音による不良品検出法)についても,その計測手法を提案し,生産現場の歩留まり向上に有効な結果を与えた.さらに,本研究で整備した高精度な水中音響計測システムを用いて,海中ロボットに関する研究に貢献した.今後は吸音材の全面装荷等,諸問題が解決次第,順次研究成果を公表していく予定である.
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