研究概要 |
超音波探傷法,あるいは,超音波非破壊評価法の定量化には超音波の伝播や散乱に関する数値シミュレーションが欠かせないが,超音波の波長は供試体全体の寸法に比べて非常に短いため,超音波計測システム全体を精密に解析しようとすると現在の計算機の能力を持っても十分ではない.そこで,本研究では,欠陥による超音波波動の散乱に関しては境界要素法による数値解法を適用し,散乱現象以外の供試体の表面での反射や内部での伝播に関しては波線理論を用いた結合解法を開発することによって,効率的な数値シミュレーション手法を提案するものである.まず,半無限弾性体中の2次元SH波動の反射,散乱問題に本結合解法を適用し,精度の確認、計算効率についての検討を行なった.その結果,結合解法によれば,境界要素法における自由表面の打ち切り誤差を小さく押さえることができ,円筒波など非平面波の入射波の場合にも十分な精度の解を得られることが明らかとなった.また,境界要素法において離散化すべき境界範囲を小さくしても十分な精度の解が得る事ができるため,計算効率もよいことが示された.さらに,厚板におけるSH波の一探触子法を想定し,様々な欠陥に対して数値シミュレーションを行ない,欠陥毎の散乱波形の特性を明らかにした.次に,2次元面内波動についてもSH波と同様,半無限弾性体問題による解析精度の確認と厚板問題への適用を行なった.得られた結論はSH波の場合とほぼ同様であるが,臨界角を越えて入射する面内波に対しては,通常の波線理論が表面波の伝播を精度よく表わすことができないため,表面波を考慮できる波線理論の構築を早急に行なわなければならない事が明らかとなった.これについては次年度の課題である.
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