研究課題
基盤研究(B)
大規模地震に対して形式の異なる擁壁の耐震設計を行う実用的な手法の確立を目的として、計6種類の擁壁模型の不規則加振実験を行った。これまでに実施した正弦波加振および模型全体を傾斜させる実験時には裏込め土中に一つのすべり面しか生じなかったのに対し、不規則波加振時には一つめのすべり面が生じた後で大きな加速度が作用すると二つめのすべり面が生じる場合があることを明らかにした。後者の傾向は、ひずみの局所化とひずみ軟化の影響を考慮して地震時主動土圧を算定することにより合理的に説明できる。また、重力式、もたれ式やL型などの従来型擁壁よりも補強土擁壁のほうが、変位し始めたあともねばり強い特性を示すことを明らかにした。この理由として、従来型擁壁が転倒し始めると擁壁底版つま先部分で応力集中が生じ、この部分が支持力破壊すると急速に変位が進展するのに対して、補強土擁壁では、擁壁が変位しても補強材の張力が有効に抵抗するために変位が進展しにくいことを示した。さらに、前述した既往の傾斜実験および正弦波加振実験結果とあわせて土圧合力について検討を行い、傾斜実験ではもたれ式擁壁を除いて実験値と物部岡部式による計算値が概ね一致するが、正弦波加振実験と不規則波加振実験では、特に大きい水平震度においてはピーク強度を用いた物部岡部式よりも実験値のほうが小さくなることを示した。ただし、すべり面が生じた後のすべり土塊の水平・鉛直方向応答加速度の大きさと位相が振動台加速度と異なることを考慮することにより、実験値と物部岡部式の差は小さくなった。上記に加えて、台湾で発生した集集地震における擁壁構造物の被災調査を実施し、従来型擁壁の被災原因として、断層変位、背後斜面のすべり、支持地盤の支持力不足、および擁壁自体の過大な慣性力が考えられることを示した。また、補強土擁壁は補強材の敷設間隔が大きいほど被害が大きかったことを示した。
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