研究概要 |
沿岸海域は陸域と接しているがゆえに不可避的にさまざまな物質が陸域から流入するうえ,特に閉鎖性水域では,豊富な栄養塩の流入に起因する活発な内部生産によって多量のプランクトンが生成されることから,多種多様な物質が混在した場になっており,既存の光学センサーでは各成分物質の濃度を精度よく分離した形で抽出することは原理的に不可能である。本研究では,このような従来の接触型光学センサーの本質的な限界を打破すべく,新たに「成分分離型マルチ分光水質計」の開発を行うことを目指しているが,本年度は,そのためのベースとなる以下の作業を行った。 1) 上記センサーは,衛星リモセン水色画像解析を対象として申請者らが最近開発した,光学理論に基づく解析フレームをベースとしている。しかし,衛星リモセンの場合ほぼ1次元的な光伝達経路を仮定できるのに対し,上記センサーの場合には3次元的な経路を考える必要があるため,衛星リモセンの際に用いた四流束モデルを今の場合には使えない。そこで,新たにモンテカルロ法をベースとした光学的シミュレータを作成することにより,センサーの諸元決定のための支援ツールを開発した。 2) このシミュレータの妥当性を検証するための室内実験を行い,基本的な分光減衰散乱特性を妥当な形でシミュレートできることが示された。 3) このモンテカルロ法をベースとした光学的シミュレータを用いて,複数物質の成分分離型逆推定ルーチンを開発した。 4) これらの理論的な検討と並行して,マルチビーム光学センサーとして必要冬なる,光学系やメモリ系・電源系の基本的なスペックについて検討を進めるとともに,現地長期連続計測のためのセンサーの耐久性,およびセンサーの小型化,といった実用上重要となるさまざまな項目に関する検討を行った。
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