地盤中に難水溶性の液体(NAPL)が浸透し、小さな液滴の状態で土壌間隙に残留すると除去が極めて困難になる。本研究では、こうした状態のNAPLに界面活性剤の溶液を接触させることにより界面張力を弱め、ミセルの状態で水溶液中に分散させ除去、もしくは、原液状態のNAPLを流動化させて除去する技術の構築を目指している。 昨年度までの成果として、界面活性剤溶液調合に関する定式およびカラム試験による多孔質媒体(ガラスビーズ)への定式適用が妥当であることが得られているので、本年度はより実用に近づけるために、LNAPLによる汚染飽和帯水層を模擬した二次元平面土槽を使用した流動化に関する実験的検討を行った。つまり、実際の場により近い状況を想定することにより、様々な場や環境の条件下における界面活性剤溶液の最適化の意義、汚染油の挙動およびその回収率がどのように変化し、どのように影響を受けているかを調べた。また同時に、界面活性剤流動化における非接触・非攪乱計測法としての画像解析手法の適用性に関する検討を行った。得られた結果は以下の通りである。 ・油飽和状態への蒸留水による流動化(揚水処理)では、間隙総体積の6倍程度の揚水量で油飽和度を10〜20%まで下げられるが、その後の揚水量に対する回収量は著しく低下することを確認した。 ・残留油飽和度を得ることにより、調整した最適化界面活性剤溶液によって残留性油を流動化させ、油飽和度を2%程度まで下げ、回収率を98%程度まで高めることに達成した。これにより最適化に関する定式が模擬帯水層においても有効であることを示した。一方で、油の回収過程において流動化が二段に分かれて起こることが判明した。混合体としての汚染物質への適用には、最適溶液と油の組成との関係を論ずる必要があると推察され、調合法および流動化過程の検討により、さらに効率化を図ることが出来る可能性を示した。 ・画像解析法により、油の界面活性剤流動化現象を非接触非攪乱で計測し、数値シミュレーションに用いられる各種基礎データを取得する手法を確立した。
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