研究概要 |
樹林帯は最近,災害時には土石流,土砂流などの土砂災害対策として,平常時にはゆとりと潤いを与えるソフトなインフラとして注目されている.本研究の目的は,災害時における樹林帯の特性スケールと土石流・土砂流の挙動との関連性,樹林帯内における流体力や掃流砂量,平面水路における樹林帯による土砂堆積状況を調べることである.得られた結果は以下の通りである. (1) 実際の土石流・土砂流の挙動と樹林帯との関連性について実態調査を行った.1986年京都府南部災害をはじめとして最近の土石流災害について,空中写真判読,地形図解析および現地調査により,地形(勾配),土石流・土砂流の流動深等のパラメータを調査し,これらと樹林帯の破壊・非破壊,樹林帯による土石流等の流向の制御,土砂の捕捉・堆積の実態を明らかにした. (2) 開水路内に,高さ40cm,直径1cmのアクリル製円柱の樹木模型を辺長8.3cmの正三角形で長さ3.6mの区間を千鳥配置し,その中の一本の円柱に作用する流体力を3分力計を用いて調べた.円柱群内の流速計測にはレーザー流速計を用いた.群中の一本円柱の抗力係数は1.4〜1.8となった. (3) 樹林帯内に移動床を設け,樹林帯内の掃流砂量を調べる実験を行った.この結果と掃流砂量式を用いて有効摩擦速度と流速係数を求めた.その結果,有効摩擦速度・見かけの摩擦速度比は樹林帯密度が大きくなると減少する.流速係数は,通常知られている清水流の場合の値よりは小さく,流砂を伴う急勾配流れの流速係数と同程度の値となっている.また,樹林帯密度が大きくなると減少する傾向があることが分かった. (4) 遊砂地内の樹林帯による土砂堆積実験を行った.遊砂地の模型を作成し、この中に樹木の直径、密生度を変化させた樹林帯の模型を設置して,上流より掃流砂を供給して,遊砂地内への土砂の堆積形状,土砂量等を測定して樹林帯による土砂堆積機能を検討した.この結果,樹林帯を設置することにより遊砂地内への土砂堆積量は若干減少するが護岸沿いの流速が減少し,護岸保護に効果があることがわかった.
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