今年度は科研費交付決定後、まず今後の現地実験に供するCoastal Drain Systemの製作に取り掛かった。現地での作業性、据付ならびに撤収の段取りを念頭に計画を立て、あまり大工事にならずに実験できることを第1に計画した。現地へのトラックによる搬入、人力による運搬、据付、撤収が可能であるためにはあまり大口径、かつ、長いパイプは適さず、いろいろ検討した結果、径が30cmで長さ10mのパイプを用い、現地で2本ずつ接続し、両端にポンプをつけたユニットを4組用意することにした。今年度はこれらを並列に埋設して実験を行うことにした。供給電源を九州電力から給電してもらうつもりでいたが、海岸にひくための諸施設や料金にかかる問題から、工事現場で用いられる発電機を借り上げた。 当初、実験は10月に計画されたが、現地漁協の同意がなかなか得られず、漁協組合員を対象に3時間近く、現地で問題となってきた侵食問題に関する講演を行い、このような実験の意義を説明した結果、熱意が伝わり同意を得、11月下旬から12月上旬に掛けて当初からの予定地点である鹿児島県の大隈半島にある志布志湾の柏原海岸で実験を行った。 干潮の限られた時間に埋設や撤収作業を行うのは机上で考えていたことと異なり、段取りにもっと工夫がいることが分かった。その他、室内実験と異なった現地実験特有の難しさを経験し、実用化にさまざまな解決すべき課題がはっきりしてきた。今回の実験結果は限られたものであるが、吸水するとまず砂浜が締るため浜の表面が下がるが、蛍光砂の動きから吸水管近くへの砂移動が活発化するのが見られ、室内実験での結果と似たものであった。
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