最終年度は実験場を鹿児島市の磯海岸とし、9月13日から10月9日までの26日間にわたって実験を行った。この海岸は志布志湾の柏原海岸に比べて、波浪が小さく穏やかな海岸である。Coastal Drainは波が小さいときしか効かないという見方があり、一方、研究代表者は模型実験から、ある程度の波があるときの方が有効であるという印象を持っていた。この現地実験はそのあたりの感触を得ることが主な目的である。実験地は中央粒径が1mmの底質からなる前浜勾配1/10程度の砂浜で、河川からの砂の供給が断たれ、養浜で維持されている。実験期間中の波浪条件は台風の接近時を除けば、波高3.6cm、周期4秒と静穏であった。実験方法などは基本的には昨年と同様である。吸水していないところに設けた測線での断面地形を基準に、その差が吸水の影響であるとみなした時、明確に効果があると判定できるものを見出すことはできなかった。これは先述の模型実験による結果を裏付けていると見ることができる。 本研究を通して得られた現地実験データは数が限られているものの、実験状況のはっきりしたもので、今後、Coastal Drainの作動下における海浜断面変化モデルの検証などに対して貴重なデータになるものと思われる。現地実験と並行して、Coastal Drainの物理的機能に関する基礎研究も進めており、また、断面変化モデルの構築の試みにも着手している。両者相俟ってCoastal Drainに対する理解を急速に進めることができた。それらの成果の一部は国内外で報告した。
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