Coastal Drain Systemが海岸侵食対策工法として有効なのかどうか、有効であるとすればどのように働いてそうなのか、といった事柄を現地スケールの実験で調べるべく、10年度と11年度は柏原海岸で、12年度は磯海岸で現地実験を行った。Coastal Drainの推進者であるVesterbyは二週間程度で汀線が数メートル前進したと記述しており、多くの人の目を惹きつけるに十分な記述である。毎分400リットルの吸水量であったというが、本実験はそれより吸水量はずっと大きなものであった。しかし、実験結果では吸水により砂浜が締まり、初期の段階では砂面は幾分低下すると思われる場合もあって、その後、幾分かの堆積もあったが、その記述ほどの大きな堆積は見られなかった。一つには、従来、一般的な重力排水に対して、強制排水を行ったことが考えられるが、一方、砂面が締まり、それ自体が侵食に対する抵抗力をますことも考えられた。これは一つの新しい視点とも思われる。この現地実験を通して得られたデータは、今後、数値モデルの開発における検証データとして重要性を持つものでもある。また、この現地実験の経験は埋設作業の効率化や、高波で埋設管が露出・流失といった事態にどう備えたら良いかと言った実際的な点でヒントとなるものと思われる。柏原海岸では実験時にほぼ0.5m〜1.5m程度の波高の波が作用し、いくらかの堆積は見られた。磯海岸はそれより波がずっと穏やかで、かなりの堆積が期待された。しかし、結果はそうはならず、むしろ、ある程度の波の作用下のほうが効くと言う、模型実験結果を裏付けていたようであった。この現地実験を通して、関連する基本的な物理的過程について、何を検討していかなければならないかと言った点がはっきりしてきた。
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