研究概要 |
下水処理場の活性汚泥を種汚泥として脱窒細菌及び硝化細菌群の混合培養をそれぞれ行い,生物濃度が300〜400mg-VSS/L程度に維持されるように培養槽を維持操作した.電極として陽極材に酸素発生過電圧の小さなメッシュ状不溶性金属,陰極として,グラファイトを選定し,被処理水を模擬したアンモニア性窒素含有人工廃水を用いて本系での水素および酸素生成効率の検討をしたところ,電流密度0.05〜0.3mA/cm^2の範囲で水素生成電流効率は約80%,酸素生成電流効率も80%程度であることがわかった.電極材への生物付着性を考慮し,これらの電極材表面を任意の厚さのウレタンフォームで覆い,上記培養槽に浸漬して作製した脱窒細菌固定化電極および硝化細菌固定化電極のそれぞれを生物固定のない対極とともに反応槽に設置して,通電による硝化及び脱窒の各過程の進行に及ぼす電流条件及び液本体溶存酸素濃度の影響について回分実験を行った.硝化過程に対し,液本体溶存酸素濃度の大きな条件では,通電に伴う酸素生成による硝化反応への寄与は小さく,液本体溶存酸素濃度の低下とともに電解生成酸素による硝化反応への寄与が顕著となった.通電条件下で硝化を進行させた場合,アンモニア性窒素濃度が大きく減少していないにも関わらず,時間の経過とともに反応速度が低下する傾向が見られた.この原因については,今後検討が必要であるが,陽極近傍での水素イオン濃度等の変化による硝化活性への影響が一因として推察された.一方,脱窒過程では,硝化過程に比べて液本体溶存酸素濃度の影響は顕著ではなかった.これは,陰極生成水素の一部が酸素消費に利用されていることや液本体側から拡散してくる酸素が,生物膜表面近傍の脱窒細菌により消費されることにより,生物膜内の電極近傍では,無酸素的環境が形成・維持されているためと推察された.
|