研究概要 |
1.生物支持体を設置した不溶性金属電極を用いた硝化細菌生物膜電極を陽極とし,所定の液本体DO濃度及び電流密度に制御した条件下で回分硝化実験を行った。同一電流密度条件では,単位陽極面積当たりの硝化速度は,液本体DO濃度の増大につれてほぼ直線的に増大し,通電による硝化促進効果は,DO濃度が小さい条件程大きくなる傾向が得られた.一方,同一液本体DO濃度では,電流密度の増大に伴い,硝化速度は増大したが,0.2mA/cm^2以上ではその効果は低減した.また,液本体DO濃度1mg/Lでも通電により,液本体DO濃度3mg/L条件程度の速度を得ることが可能であった. 2.上記と同様に作製した脱膣細菌生物膜電極を用い,硝化実験と同様な操作条件下で脱窒を行った場合,同一電流密度条件では,単位陰極面積当たりの脱窒速度は,液本体DO濃度の増大につれて低下したが,DO濃度3mg/Lでも無酸素条件の70%であった.これは,生物膜内が表面近傍の細菌による酸素消費で低酸素条件が維持されており,電解生成水素による脱窒が液本体DOの影響を受けにくくなるためであると考えられた.一方,電流密度の増大につれて,脱窒速度は,比例的に増大し,生成水素の脱窒に対する利用率は,条件によらず安定して50〜60%であった. 3.上述の検討から,液本体DO濃度1〜3mg/Lで操作した場合,面積基準硝化速度は,脱窒速度の約1/3程度であるため,これを補完する陽・陰極面積比を有する同時処理反応槽を試作した.現在,硝化及び脱窒細菌生物膜電極の培養・馴致段階であり,次年度では種々の操作条件下で硝化・脱窒同時処理特性を明らかにする予定である. 4.人工排水による電解実験から,酸素・水素生成電流効率は,0〜0.3mA/cm^2の範囲内でそれぞれ28〜85%及び35〜50%程度であるとともに,通電に伴うアンモニア性窒素の電気化学的酸化等は起こっていないことが確認された.
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