研究概要 |
1.単位電極面積当りの処理特性を検討するために,一対の生物膜電極を槽内に浸漬して連続硝化・脱窒処理実験を行ったところ,液本体DO濃度が1mg/Lの条件下において,無通電系に比べて通電系は,亜硝酸性窒素の蓄積がない安定した硝化と脱窒が単一槽内で同時的に進行した.また,液本体DO濃度を0.2mg/L以下にしても,電解で生成する酸素を利用することにより硝化が進行した.液本体溶存酸素濃度が1mg/L程度以下の場合,硝化で生成した硝酸性窒素は,電流密度の増大に対応した処理速度で脱窒され,処理水のTN濃度は減少した.しかしながら,液本体溶存酸素濃度が5mg/L程度になると陰極から生成する水素の脱窒への利用率は,脱窒細菌生物膜に浸透する溶存酸素による脱窒活性の低下が顕著になること等により,大きく低下した. 2.充填層型生物膜電極を嫌気-好気生物ろ床法の好気槽に浸漬し,実下水を用いて連続処理実験を行った結果,対照系に比べTN除去率が向上し,本法の適用性が示された.また,2mg/L程度の液本体DO濃度がTN除去に対して効果的であった. 3.本法による硝化と脱窒に対する生物膜反応モデルを構築して反応速度解析を行い,計算結果と実測値の比較からモデルがほぼ妥当であることが確認された.計算結果から,陽極の硝化細菌生物膜内を全域に渡って好気環境に維持されるように液本体DOと電流密度条件を操作すると効果的に硝化速度を増大でき,陰極の脱窒細菌生物膜では,液本体DO濃度が3mg/L程度までであれば生物学的酸素消費により膜深部が無酸素環境に保たれて,液本体が無酸素条件である場合と同等の脱窒速度に維持できることが理論的に示された.また,電極-生物膜界面が飽和濃度に達するような電流密度で通電しても硝化及び脱窒速度の向上に対して効果的でないことがわかった.
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