研究課題
基盤研究(B)
水の微生物学的安全性を確保するための重要課題として、水系感染性の腸管系ウイルスが挙げられる。ウイルスを検出する方法としてはPCR法が簡便性および検出感度に優れている。一方、既存のウイルス濃縮法は、PCR法による検出に適していない。本研究では、RT-PCR法による検出を前提としたウイルス濃縮法(陰電荷膜吸着・酸洗浄・アルカリ誘出法]を開発し、その手法を腸管系ウイルスの一種であるポリオウイルス1型に対して試みた。また、その際、モデルウイルスとして用いたF特異大腸菌ファージQβおよびポリオウイルスのゲノムRNAを、TaqMan PCR法を用いて定量する方法を開発して用いている。また、Qβおよびポリオウイルス濃度をプラック法によっても測定している。Qβ、ポリオウイルスおよびそれらのゲノムRNAの様々なpH条件下での生残性を調べ、ウイルス濃縮に用いることのできるpH域を決定している。Qβの濃縮法としては、MgC1250mMを加えたろ過原水を約100ml/minでろ過したのち、pH4.8程度の希硫酸溶液を洗浄液として膜にとおし、pH10.5程度のNaOH溶液5mlで誘出し、ろ液を回収して中和した。ポリオウイルスの濃縮法としては、MgC1225mMを加えたろ過原水を約100ml/minでろ過したのち、pH3程度の希硫酸溶液を洗浄液として膜にとおした。誘出工程では、pH10.5〜12程度のNaOH溶液5mlを同じ膜でろ過し、ろ液を回収して中和した。これらの方法により、従来法に比べ遜色のない範囲の回収率が選られ、また回収された濃縮液はPCR法に対する阻害作用が少ない点で画期的な濃縮法といえる。なお、プラック法によっても、酸洗浄によるウイルス回収率の向上を確認している。
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