1)2元構造膜 試作膜は直径7Aをピークに6-9Aのシャープな細孔分布のミクロ孔と直径100A程度のやや広い細孔分布のメソ孔を有していることが分かった。前者はポリマー微粒子が熱分解で脱塩素する際に形成された炭化微粒子内の細孔であって、主として吸着を支配し、後者は微粒子間空隙であって水の透過速度を支配すると考えられる。なお、細孔容積は0.30ml/g、比表面積は750m2/g程度であるった。 純水透過流束および分画分子量測定の結果から、本活性炭膜は直径0.05-0.1mmで直径7A程度のミクロ孔を有する活性炭微粒子が、直径100A程度の隙間を残して凝集・焼結して2元構造を構成していると言える。電子顕微鏡による観察によると、このような構造の活性炭膜はセラミック担体の外表面にのみスキン状に付着しているのではなく、ある程度の深さまでセラミック担体内部に含侵している。このことから、膜の機械的強度は十分強く、通常の使用においては膜の剥離は見られない。 2)電熱再生 活性炭膜は膜素材がカーボンの多孔質で適度な導電性を有していることに着目し、膜の両端に電圧を直接印加することで、ヒーターとしての発熱を利用する「電熱再生法」を提案し検討した。活性炭膜がきわめて薄いことから、直接通電では瞬時の昇温が期待された。熱収支等の解析が必要ではあるが、原理的には短時間での簡便再生が可能であると言える。電熱再生の適当な温度や時間は吸着質によって異なる。新膜と再生膜では透過流束、除去率ともにほぼ同等の性能を示し、この系では電熱再生法が極めて有効であると言える。 本研究で開発した浄水処理のための活性炭膜は、ろ過機能と吸着機能とを併せ持ち、かつ、きわめて低い圧力下で高い透過流束と優れた低分子量有機物除去性能を有している。このような特性を持つ新材料は、一括浄水処理を可能にすることから、新しい浄水システムの材料となりうると考えられる。
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