研究概要 |
開発途上国では,都市への人口集中によって都市域の水質汚濁問題が深刻化し,生活環境の悪化のみならず,健康への脅威にもなっており,“適切"な下水処理システムを整備してゆくことが緊急課題となっている。途上国での下水処理システムを普及させていくためには,地域の経済構造,社会構造等の実状に適した技術を創生しなければならない。本提案処理プロセスは,UASB法とスポンジキューブ懸垂型リアクターを組み合わせた,エアレーション不要・余剰汚泥生成ゼロの省エネルギー・低環境負荷型の新規下水処理装置であり,途上国に適用可能な超低コスト型新規下水処理システムの実用化に向けた技術の創成を目的としている。 新規下水処理装置のセミパイロット・スケール(UASB180l容量+スポンジキューブ懸垂型リアクター(1.5cmスポンジ90個,2m))を下水処理場に設置し実下水を用いて長期の連続運転を実施している。本処理プロセスは6ヶ月間の運転期間中は汚泥を一切引き抜かず,余剰汚泥発生ゼロであり,水質も良好であった。 本プロセスの処理性能が良好なメカニズムは微生物がスポンジ内に高濃度に保持されていることが大きな要因であると分かった。また,酸素微小電極を用いてスポンジ内の酸素濃度を測定したところ,内部にも酸素が供給されており,エアレーション不要でも酸素取り込み機能が優れていることも重要な原因であることが分かった。さらに16SrRNAを標的とした蛍光標識モレキュラー・プローブのIn situ Hybridization(FISH)法により,硝化細菌が十分に存在していることが明らかとなり,硝化反応が優れている要因も把握できた。
|