研究課題/領域番号 |
10555193
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 大同工業大学 |
研究代表者 |
堀内 将人 大同工業大学, 工学部 (00157059)
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研究分担者 |
光田 恵 大同工業大学, 工学部 (40308812)
下島 榮一 大同工業大学, 工学部 (80027276)
米田 稔 大同工業大学, 工学研究科 (40182852)
森澤 眞輔 大同工業大学, 工学研究科 (50026340)
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キーワード | アンチモン / リスク評価 / 土壌 / 作物 / 大気 / 地下水 / 動態評価 / 体内代謝モデル |
研究概要 |
本年度に得られた結果ならびに結論を以下に要約する。 (1)アンチモン製錬工場周辺で各環境試料を採取し測定した結果、製錬工場周辺からの距離が近づくほど土壌中アンチモン濃度が高くなる傾向がみられた。土壌から作物へのアンチモンの移行は少ないが、大気からの沈着影響が大きいと推定され、作物種別ではより大気に曝されている葉菜、実菜、根菜の順に作物中アンチモン濃度が高く検出された。環境水中アンチモン濃度については、地下水では環境水質基準の7.5倍もの濃度が検出され、飲用には適さないといえる。地下水中のアンチモンの浸入機序については、今後さらに検討を加える必要がある。大気中アンチモン濃度については、屋外では製錬工場からの距離が50[m]地点と100[m]地点において比較的高い濃度を記録した。 (2)(1)の測定結果より、製錬工場周辺住民の1日あたりのアンチモンの経口摂取量および大気からの吸入摂取量を推算した。その結果、製錬工場周辺住民のアンチモンの摂取量は決して低くはなく、場合によっては許容摂取量を超えることもありうることがわかった。 (3)アンチモンの健康リスクに関する決定臓器といわれる心臓および肝臓への移行を考慮した、体内代謝を記述する数学モデルを構築した。パラメータ値の設定には、一般人の平均的組織中濃度を用いてパラメータフィッティングを行った。構築した代謝モデルを用いて製錬工場周辺住民のアンチモンによる健康リスクを評価したところ、製錬としての操業を停止してから16年を経た現在においても、周辺住民の健康リスクは無視することのできないレベルであるといえる。また、特に子供の偶発的な土壌摂取による健康リスクは高く、アンチモン濃度の高い土壌を摂取した場合には、大人が許容限界量を摂取した場合の各組織中濃度の計算値を超える可能性が高い。子供の方が大人よりもアンチモンに対する感受性が高ければ、子供の健康リスクはさらに高くなる可能性がある。
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