研究概要 |
骨組構造物を梁降伏先行型全体崩壊機構となるように設計することは,耐震設計上合理的と考えられている。ところで,この崩壊機構を形成するように確定論的に設計を行ったとしても,部材の降伏耐力に関係するバラツキは,柱と梁の耐力バランスが逆転して柱に塑性ヒンジを生じさせる危険性がある。本研究では確率極限解析法を用いて,降伏耐力等のバラツキを考慮して梁降伏先行型全体崩壊機構を実現するための柱・梁耐力比(COF--Column Overdesign Factor)の評価法を提案し,確定論的に設計した場合にでも,梁降伏先行型全体崩壊機構からかけ離れる確率をある値に収めることができる有効なCOFのおおよその目標値を設定することを目的とする。 今年度ではまず昨年度で整備したプログラムを用いて、部材耐力の間の相関性の影響を調べ,部材耐力のバラツキが地震荷重のバラツキより小さく、部材耐力の間の相関性が目標COF値に影響少ないことが明らかにした。この結果に基づいて、全体崩壊機構の定義を考察し、目標COF値を定める時用いる想定崩壊レベルとして、厳密な梁降伏先行型全体崩壊機構、準梁降伏先行型全体崩壊機構と全体崩壊機構の三つのレベルを提案した。それぞれのレベルで望ましくない崩壊機構の出現確率と望ましい梁降伏先行型崩壊機構の出現確率の割合を評価指標として設定し,多層多スパン骨組構造物において、全体崩壊機構の実現を保証するためのCOF値を確率論的に評価した。その結果としては、厳密な梁降伏先行型全体崩壊機構と比較して、全体崩壊機構の実現を保証するためには、小さな目標COF値で十分であることを明らかにした。 目標COFに大きな影響を与える様々な要因として、許容レベルとしての評価指標、全体崩壊機構の定義、部材耐力の間の相関性、荷重タイプなどが考えられる。これらの要因を総合的に考慮し、全体崩壊機構の実現を保証するためのCOF値を定量的に評価することは次年度の課題である。
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