フラッシュオーバーは、重大な被害を及ぼす火災現象として知られている。従来より数多くの研究がなされているにも拘わらず、その発生機構がある程度、把握されているに過ぎない。本研究では、火災初期での「フラッシュオーバー」現象とそれに引き続いて発生した「バックドラフト」現象に着目して、研究を進めようとするものである。つまり、区画内の木材など燃焼物の物性の変化、特に、表面の変化、揮発分の放出時期と成分、炭化の進み具合、燃焼物の内部温度変化傾向や内部発火の可能性などについて、高温化で観測可能な顕微鏡を用いて、詳しく調べる。これらの物性の変化や放出ガス、内部発火などの諸現象と「フラッシュオーバー」との関連性を実験で確認すると共に、シミュレーションでも再現し、消火対策を確立しようとするものである。 本年度は、北海道大学で基礎実験を開始した。消防科学研究所での既存の小型区画火災装置を使って実験は、研究所建家の改造工事が終了したので、平成12年度から開始する予定でいる。北海道大学で行っている、高温顕微鏡用ステージを使って、種々の昇温速度下、窒素濃度雰囲気下での、木材の燃焼物の物性(形状、色相)の変化の観測は、火災学会や建築学会等にて報告済みである。 今後は、札幌市消防科学研究所で、基礎実験と同じ木材の基本的な燃焼特性を電気炉で測定する。得られた実験データを平成12年度に整理し、フラッシュオーバーからバックドラフトまでの燃焼材の物性変化と区画内燃焼状況の変化とを詳細に照らし合わせ、両現象の発生機構をできるだけ明確にする予定である。 研究計画は全体に遅れ気味ではあるが、平成12年度の早い時期にまとめ、種々の学会等で報告する予定である。
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