まず、Ti-Ni合金薄膜をスパッタリング法によりSi基盤上に作製し、記憶熱処理および変態特性評価を行った。用いたターゲットはTi-Ni合金である。まず、真空熱処理炉を用いて、熱処理温度と処理時間を系統的に変えて形状記憶処理を行い、変態特性に及ぼす熱処理効果を調べた。その結果、変態温度は熱処理温度が高くなる程上昇することが判った。 次に、Ti-Ni合金薄膜をコーティングしたSi基板を、フォトリソグラフィ法を用いて微細加工し、アクチュエータ構造を作製した。アクチュエータ部としては膜厚が2.0ミクロンのTi-Ni膜と、ミクロンのSiO2膜とから構成されたダイアフラム型構造ができた。通電加熱及び放熱中の変形挙動を、レーザー光を利用した3次元形状測定装置により測定した。加熱によりフラットな形状に回復し、放熱により数十ミクロンの高さに盛り上り、可逆的な動きが確認できた。冷却中の形状変化が起こる開始温度(Ms点)は340Kであり、過熱により形状が完全に平坦になつ温度が360Kであった。いずれの温度も、室温よりも50K以上高く、良好な自然冷却速度が期待できるため、50Hz程度の応答性が実現できた。サイズの異なるアクチュエータを作製して、動作特性に及ぼすサイズ効果を調べた。100mmから1400mmの範囲のサイズで良好な駆動が可能であることが確認できた。アクチュエーターの変位量はサイズにほぼ比例をすることが解った。このことは、応用目的に応じて、一回当たりの駆動で必要とされる仕事を、アクチュエーターのサイズ調整で実現できることを意味する。
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