X線透過強度は、物質固有の量である線吸収係数と、厚さに依存して変化する。その結果、X線透過像にコントラストが生じ、物質の内部構造を知ることができる。この技術はX線ラジオグラフと呼ばれ、様々な分野で使われている。しかし、このコントラストは、上記の2つのパラメータに依存して変化するすため、厚さの影響か、吸収係数の影響か区別できない場合、透過像から内部構造の詳細を理解するのが、困難な場合が発生する。本申請では、この問題点を解決するために、線吸収係数が入射X線波長の関数であり、物質固有の吸収端で不連続的に変化することを利用して、吸収端前後の波長で測定した透過X線像の画像差から、吸収端に対応する元素の透過X線像だけを取出す元素選択性ラジオグラフ技術開発のための基礎的な研究を行った。 この技術開発では、特に、以下の点に工夫を必要とした。 (1)イメージングプレートによる画像測定、画像処理用ソフトの開発により、測定した透過X線画像を定量的に数値化するための技術を確立した。 (2)数値化された画像データの規格化のための技術は、試行錯誤の結果、入射X線強度を適当な金属箔からの弾性散乱X線により規格化することにより実現した。 (3)測定画像データの差を取る場合に、原点を正確に決めておくことが重要であることも実際に測定をしてみて明らかになった。この問題解決には、全く透過しないような物質でできた基準点を用いて克服した。 今後の課題としては、本測定は測定する対象物質によって入射X線のエネルギーが決まってしまうため、軽い金属元素の場合は、透過能自体が小さくなり試料厚さが厚い場合には、得られる紺トラスの差が極めて小さくなり、測定精度が低下することであった。これに対しては、強度を十分に稼ぐ方法を用いるなどの工夫が必要であると考える。
|