研究代表者が独自に開発した、高速ポジトロンビームによる材料中の微小欠陥のキャラクタリゼイション技術を応用し、エネルギー可変高速ポジトロンビームを用いる微小欠陥のその場分析装置の開発に取り組んだ。この新技術は、これまで10mを越す大型加速器を必要としていた技術を、新しい発想によって一気にデスクトップサイズにまでコンパクト化するとともに、フィールドでの使用にも道を開こうとするものである。本研究によって、卓上型材料ナノ構造欠陥深度分布計測装置を開発し、さらに本年度は可搬型陽電子ビーム欠陥探査装置の開発に技術的見通しを確立した。 具体的には、前年度に開発した技術の延長上にたって、移動式の材料非破壊検査装置の設計を実施した。特に、陽電子検出器、消滅ガンマ線検出器の小型化にカを注いだ。本装置を用いると、高速陽電子ビームを用いるので試料を切り出す必要がなく、被試験物に陽電子ビームを照射し、そこから放出される消滅γ線を検出することによって、現場で非破壊で重要構造物中の構造欠陥をその場測定することが可能となる。すなわち、各種構造体の疲労の度合いや照射欠陥等の蓄積度を非破壊で診断することが可能となり、各種構造体の余寿命診断を行う上で大きな武器となる可能性を秘めている。
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