研究概要 |
本年度は,まず,窒化アルミニウム(AlN)表面をセバシン酸で表面化学修飾することで得られた有機-無機ハイブリッド界面に,様々な焼結助剤を共添加することによるAlN焼結体の焼結性・熱伝導特性の改善を試みた。すなわち,AlN表面に固定化されたセバシン酸(ジカルボン酸)の未反応カルボキシル基の水素イオンと焼結助剤(イットリウムイオン)とを酢酸イットリウム水溶液中でイオン交換し,さらに酢酸リチウムや酢酸カルシウムを焼結助剤として直接添加することにより熱伝導特性のさらなる向上を目指した。その結果,Y^<3+>のみ焼結助剤として用いた時に比べ,AlNの粒径にあまり違いが見られないものの粒径の均一性がかなり高い焼結体が作製できた。また,その熱伝導率も,Y^<3+>のみ添加して作製したAlN焼結体にくらぺ約1.5倍高い値を示すことが分かった。この結果から,添加したLi^+、Ca^<2+>が焼結助剤として有効に作用することが確認できた。 次に,有機-無機ハイブリッド界面をセラミック材料のナノ構造制御に利用するという観点から,水溶液中の界面活性剤を鋳型とした高規則性メソポーラス酸化スズの調製を試みた。界面活性剤としてセチルトリメチルアンモニウムブロミドとセチルピリジニウムクロリドを,酸化物材料としてスズ酸ナトリウムやケイ酸ナトリウムを用い,それらをイオン交換水中で混合させてpHなど種々の条件を設定することにより,3-4nm径の均一微細孔を有するメソポーラス酸化スズやメソポーラスシリカが作製できることが分かった。しかし,後者は800℃まで熱処理してもメソ構造が安定であるのに対して,前者は400℃での熱処理でも容易にメソ構造が破壊される。今後,化学センサ材料や触媒材料に利用するためには,この熱安定性に大幅な改良を施す必要があることが分かった。
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