研究概要 |
近年,火力発電プラントの高温厚肉部材に,高Cr耐熱鋼が多く使用されている.これらの高温構造部材は.クリープ変形がおきる条件で使われる.本研究では,高Cr耐熱鋼の代表例であるマルテンサイト組織のフェライト系耐熱鋼を対象とし,クリープ条件での非破壊的余寿命評価法の確立と実用化を目的として研究を行い,以下の結果を得た. 1. クリープ変形によって,マルテンサイトラス組織の回復(ラス幅の増大とラス内転位密度の低下)が起きる.マルテンサイトラス幅の変化率Δ入/Δλ^*とひずみの間には直線関係があり.この関係は試験温度や応力によらない.ここで,Δλはある時点でのラス幅と初期値の差,Δλ^*はラス幅の飽和値と初期値の差である. 2. Δλ/Δλ^*とひずみの関係を,改良9Cr-1Mo鋼,およびwを含むNF616鋼,HCMl2A鋼,TAF650鋼で調査した.その結果,Δλ/Δλ^*とひずみの関係が,試験条件のみならず,材料にもよらず1本の直線で表現できることが明らかになった.この成果から,ラス幅の変化率Δλ/Δλ^*とひずみの関係の検量線は,広範な試験条件(温度,応力)や多種の材料に適用できることを実証した. 3. マルテンサイト組織のフェライト系耐熱鋼でこれまでに得られているクリープ曲線データをθ法を使ってデータベース化すれば,クリープ曲線を容易に推定できるようになる.この結果とラス幅-ひずみ検量線を組み合わせれば,任意条件での余寿命が評価できる.この準非破壊的余寿命評価の手法を提案した. 4. 室温で測定した硬度とラス幅の逆数の間には,クリープ試験条件(温度,応力)によらない直線関係があることが明らかになった.この関係を使えば,硬度測定からラス幅の変化を非破壊的に評価できる. 5. 硬度とラス幅の逆数の関係の直線は,材料によって平行移動する.この移動は,材料内の炭化物析出量の差違に起因している.
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