本研究では電磁連続鋳造(EMC)装置を用いて、冷間圧延のみで薄板コイルまで製造可能なアルミニウム合金薄板スラブの連続鋳塊を作製することを主目的とした。そのため、まず鋳塊の表面状態と操業条件との関係を調べた。また、EMC鋳造法の特徴を生かした半溶融成形加工用素材の製造も試みた。さらに、得られた素材を用いて、圧延加工あるいは半溶融成形加工し、それらの特性評価も行った。得られた結果を要約すると以下のようになる。 (1)連続鋳造初期におけるメニスカスの厚さは、ボトムブロックの厚さに強く影響され、製造される薄板スラブの板厚はボトムブロックの厚さにほぼ等しくなる。鋳造速度960mm/min、冷却水量20L/minの条件で製造した薄板スラブは、板厚約7mmで、表面は滑らかで、マクロ組織は等軸晶になる。本方法では板厚が薄いため、冷却効果が大きくなり、ミクロ組織はDASが約10μmと非常に微細になり、その結果、エッジ割れ等の欠陥もなく、総圧下率75%まで冷間圧延が可能となる。 (2)得られたEMC材は、Fe添加量の増加および冷却速度の増大に伴い、晶出化合物が増えるものの、微細かつ均一に分散するため、それらが分散強化と焼なまし時の再結晶粒の微細化の役割を果たし、圧延材の引張特性は向上する。そのため、不純物としてのFeを多く含む5052アルミニウム合金でも、Mg量をJIS規格の組成以下にし、直接冷間圧延後、熱処理することにより、その引張特性はJIS規格値を充分満足するようになり、不純物の無害化が可能となる。 (3)各合金とも結晶微細化剤を添加し、EMC法を応用することにより、内部まで微細かつ均一な結晶粒を有するビレットが得られる。そのようなビレットを用いて半溶融加工することにより、固相粒子が充分に球状化し、薄肉部分への充填性および組織の均質性が向上する。得られた半溶融加工材にT6処理を施すことにより、7475合金は鍛造材に、A357合金では、DC+電磁撹拌ビレットを用いて半溶融加工した試料に匹敵する引張特性を示す。
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