研究概要 |
本年度の研究実績は,以下の通りである. (1)光電子増倍を用いた,セラミックスの破断および破断に至る過程におけるフォトンエミッションをリアルタイムで計測し,パソコンへ取り込めるように,フォトンエミッション計測システムに改良を加えた. (2)(1)の装置を用いて,アルミナと窒化ケイ素を用いた4点曲げ試験を行い,破断の前駆現象である「き裂発生」に伴うフォトンエミッションの検出を試みた. (3)窒化ケイ素の場合,破断に至るまでの負荷応力約300MPa以上の領域でも,フォトンエミッションの漸増が観察された.製造欠陥周辺を原子間力顕微鏡で詳細に観察し,フォトンエミッション検出前後で何らかの差異生じていないかを検討したが,「き裂」の明確な痕跡は観察できなかった.なおアルミナでは,フォトンエミッションの漸増は観察されなかった. (4)き裂発生・成長とフォトンエミッションの関係を明確にするために,窒化ケイ素とアルミナ試験片にビッカース予き裂を導入し,このき裂を安定成長させたときのフォトン数を計測した.その結果,窒化ケイ素では,き裂が1ミクロン成長する時に平均して1個のフォトンが放出されることがわかった.一方,アルミナでは,予き裂材においてもフォトンエミッションは計測されなかった.
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