研究概要 |
界面反応において数μm〜数十μmサイズの不均一性が問題になることが多い。このサイズでの不均一反応の評価には,走査電気化学顕微鏡(SECM)が有効であることを既に実証した。更に,マイクロインピーダンス測定法をSECMと併用することができれば,不均一に進行する界面反応を総合的に解析することが可能となる。本研究は,これを実現する新型のSECMを開発し,局部電極反応の解析に適用することが目的である。本年度は,以下の事項を遂行した。 1. 既存のSECMに圧電素子で駆動するステージを付加し,プローブ電極の走査システムの改良を行った。これにより,鮮明なプローブ電流像を得る上で必要な試料表面の垂直方向に対する走査能力(試料-プローブ電極間距離の制御能力)が2桁向上し,走査分解能は0.015μmとなった。 2. 1で改良したSECMを用いて,チタン不働態皮膜の不均一性評価を行った。その結果,下地金属の結晶粒によって膜厚が異なること,および皮膜作成電位の増加とともに膜厚の不均一性が顕著になることを見い出した。 3. 各種水溶液中,電気化学反応が進行しない電位領域において,p型およびn型InP電極の交流インピーダンス測定を行った。その結果,両電極ともに不純物濃度が電位によらずほぼ一定であること,およびフラットバンドポテンシャルが,溶液のpHに依存することを見出した。 4. 微小白金ディスク電極に,更に2本の微小白金黒電極を組み合わせた混合プローブ電極を作製した。微小白金ディスク電極は,SECM測定を,微小白金黒電極対は,マイクロインピーダンス測定をそれぞれ可能とする。マイクロインピーダンス測定には,周波数特性解析装置(FRA)を内蔵した交流インピーダンス測定装置を構築した。2本の対となる微小白金黒電極間,および試料電極-微小白金電極間のマイクロインピーダンスを計測することにより,試料電極の局部的なマイクロインピーダンスを検出することが可能となった。 現在,エポキシ樹脂に埋め込んだ白金箔の断面をモデル試料としマイクロインピーダンスのラインスキャン測定を試み,微小白金黒電極の作製条件,試料電極および2本の微小白金黒電極距離等の最適条件の検討を行っている。
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