研究概要 |
2次元のCCDイメージセンサと波長可変光源を組み合わせることで,高速顕微エリプソメトリー測定が可能なダイナミックイメージング分光エリプソメータ(DISE)を開発し,これを用いて表面酸化物薄膜の成長・溶解過程の実時間解析,ならびに薄膜の厚さと分光学的性質の場所的ミクロ変化の解析を行った。得られた主要な成果は次のようにまとめられる。 1.ダイナミックメージング分光エリプソメータの作製と性能評価:リアルタイム分光エリプソメトリー(RTSE)測定とイメージングエリプソメトリー(IE)測定の両方が可能な装置を作製した。RTSEモードでは100msで512波長のスペクトル測定が,IEモードでは一波長当たり約5秒で空間分解能25μmのイメージングが可能であることが分かった。 2.CVD酸化物薄膜の成長・溶解過程の実時間解析:MOCVDによるZrO_2薄膜の成長過程を解析した結果,薄膜の成長は核形成・合体,バルク層成長,表面ラフネス層形成の3段階で進行することが分かった。また,CVD-Fe_2O_3-Cr_2O_3薄膜の酸化および還元溶解過程を解析した結果,酸化溶解ではCr_2O_3,還元溶解ではFe_2O_3の選択溶解が起こることを実時間で捕らえることができた。 3.不働態皮膜性状の場所的ミクロ変動の解析:0.1M-NaCl溶液中における18-8ステンレス鋼の孔食誘導期間中における不働態皮膜の変質過程を解析した結果,孔食は膜厚の場所的変化の大きい箇所に発生しやすいことが分かった。また,亜共析鋼(0.12%C)を用いてpH8.45のホウ酸塩緩衝溶液中で生成する不働態皮膜の厚さと光学定数スペクトルの場所的ミクロ変動を測定した結果,フェライト上の皮膜の厚さはパーライト上のそれよりも10%ほど厚いことなどが分かった。
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